全国の山岳地帯や渓谷に点在する「魚止の滝(うおどめのたき)」という名称には、その地形が持つ決定的な特徴が色濃く反映されています。古来、イワナやヤマメといった強い遊泳力と跳躍力を持つ渓流魚であっても、これ以上は上流へ登ることができない垂直の落差や激流を指して、マタギや釣り人、地域住民が自然発生的にそう呼び始めたのが魚止の滝の由来です。
自然地理学や生態学の視点から見ても、魚止の滝は単なる景観美にとどまらず、河川生態系の大きな「境界線(バウンダリー)」として機能してきました。滝の下流部には豊富な川魚が生息する一方、滝より上流は魚類が存在しない原生の源流域となるケースが多く、かつては山岳信仰における結界や、人跡未踏の領域を分かつ象徴でもありました。
「魚が止まるほどの険しさ」という言葉通り、長い年月をかけて硬質な岩盤が削り出されて形成された断崖は、地球のダイナミズムを間近で観察できるジオサイトとしての価値も併せ持っています。