旅行者が最も見落としがちな盲点が、「近鉄奈良駅」と「JR奈良駅」の立地的な距離差です。地図上では同じ奈良市内中心部に見えますが、主要観光地へのアプローチにおいて大きな違いが生じます。
興福寺、東大寺大仏殿、春日大社、奈良公園などの主要スポットは、市街地の東側に集中しています。近鉄奈良駅はこれらの名所のすぐ西側に位置する地下駅であり、地上に出れば東向商店街や興福寺の境内入口まで徒歩5分圏内です。一方のJR奈良駅は、近鉄奈良駅からさらに西へ約1km離れた場所に位置しており、奈良公園エリアへ向かうには三条通りを徒歩15〜20分歩くか、路線バスに乗り換える必要があります。
夏の酷暑や雨天時の移動、足腰に不安のあるシニア層や小さな子ども連れのファミリーにとっては、この徒歩15分の差が旅の疲労度を大きく左右します。奈良公園エリアの観光が主目的であれば、近鉄を選ぶのが圧倒的に有利です。
一方で、JR奈良線には近鉄にはない独自の強みがあります。それは「沿線観光地への途中下車のしやすさ」です。JR奈良線は、世界的人気を誇る「伏見稲荷大社」の最寄りである稲荷駅や、世界遺産・平等院鳳凰堂のある宇治駅を直接経由します。「午前中に伏見稲荷を参拝し、昼に宇治で抹茶スイーツを堪能してから奈良へ向かう」という周遊計画を立てる場合、JRの利便性は他を寄せ付けません。