前田穂南選手が打ち立てた2時間18分59秒という記録は、2005年に野口みずき氏がベルリンで記録した2時間19分12秒を19年ぶりに塗り替える歴史的快挙でした。単なる偶然や気象条件の恩恵ではなく、そこには明確な技術的・肉体的ブレイクスルーが存在しました。
最大の勝因は、166cm・約46kgという長身痩躯の骨格を極限まで生かした「省エネ型ロングストライド走法」の完成です。従来の日本女子マラソンは高ピッチで小刻みに刻むスタイルが主流でしたが、前田選手は1歩あたり約160cm〜165cmに達するダイナミックな歩幅を維持しながら、上下動のロスを最小限に抑えるフォームを確立しました。
さらに見逃せないのが、アシックスのトップレーシングモデル「METASPEED(メタスピード)」シリーズの存在です。前田選手のピッチとストライドの比率変化を研究所で細かくセンシングし、カーボンプレートの硬度やミッドソールフォーム(FF TURBO PLUS)の反発特性を彼女専用にミリ単位でアジャスト。シューズの推進力と天満屋伝統の泥臭い30km〜40km走のスタミナが完璧に共鳴した結果が、18分台突入という結実をもたらしました。