ビジネスの潮流において、「パーパス(企業の存在意義)」は単なるCSR(企業の社会的責任)の枠組みを完全に脱し、優秀な人材の獲得や投資家からのESG評価を左右する経営の中核へと移行しました。
かつて利益至上主義に傾斜していた巨大コングロマリットが、本業を通じていかなる社会課題を解決するのかを再定義した実例は枚挙にいとまがありません。自社の存在意義を「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」と再定義し、過去最高益の更新を重ねたソニーグループや、創業精神に立ち返り「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」を掲げて事業構造改革を断行した日立製作所などは、その代表例です。
しかし、美辞麗句を並べ立てただけの「パーパスウォッシュ」に陥る企業も後を絶ちません。現場の社員が「会社が言っている綺麗事と、日々のノルマ追及のギャップに辟易している」と白け切っている組織では、パーパスを掲げれば掲げるほど離職率が跳ね上がるという皮肉な現象が起きています。
【プロの結論】存在意義を問い直す人・組織への判断基準
存在意義の追求が薬になる局面と、逆に毒になる局面があります。自らのキャリアや所属組織を見極める客観的な判断基準は以下の通りです。
【今すぐ存在意義の追求を深めるべき人・組織】
・日々の業務スキルは身についたが、仕事の「向かう先」や情熱が見出せず、成長が頭打ちになっている人。
・売上や利益などの定量的指標は達成しているものの、社員の士気が低下し、組織の一体感を失っている企業。
・判断に迷う重大な事業転換期において、拠って立つべき理念的判断軸を必要としているリーダー層。
【いま存在意義を問うことを一旦中断し、休養すべき人・組織】
・心身が著しく疲弊し、睡眠障害や食欲不振など身体症状が出ている人(この段階で存在意義を問うと、無力感が増幅し極めて危険です。まずは「存在価値(休むこと)」の回復に専念してください)。
・資金繰りが逼迫し、当面の現金枯渇の危機に瀕している企業(生き残るための現場の兵站確保が最優先であり、観念論に逃避してはなりません)。