太るメカニズムを比較すると、糖質過剰と脂質過剰では体内での蓄積ルートが異なります。糖質過剰で太る理由は、肝臓と筋肉のグリコーゲンタンク容量(成人平均で約400〜500g程度)からあふれ出た余剰糖が、「de novo lipogenesis(脂肪酸新生)」という経路を経てトリグリセリド(中性脂肪)へと再合成され、脂肪組織へ送り込まれるためです。
対照的に、脂質過剰で太る理由はよりシンプルかつ直接的です。脂質はもともと脂肪酸の形をしているため、化学的な変換プロセスを経ることなく、わずか約2〜3%の代謝ロス(食事誘発性熱産生)だけで体脂肪へとストックされます。糖質を脂肪に変換する際には約20〜25%のエネルギーが熱として消費されるのと比べ、脂質の蓄積効率は圧倒的に高いのです。
しかし、生化学的に最も恐ろしい肥満トリガーは、どちらか単体の過剰摂取ではなく、「糖質+脂質」の同時過剰摂取にあります。生理学で知られる「ランドル・サイクル(ブドウ糖と脂肪酸の競合作用)」が示す通り、高GIの糖質によってインスリンが大量に出ている血中に、高濃度の遊離脂肪酸が流れ込むと、インスリンの作用で脂肪酸の取り込みが一気に加速し、かつ燃焼経路は完全に遮断されます。ラーメンの背脂、フライドポテト、ピザ、ショートケーキといった食品が極めて太りやすいのは、この代謝トラップを完璧に満たしているからです。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」が推奨する糖質と脂質の1日の摂取目安量は、総摂取カロリーに対して炭水化物が50〜65%、脂質が20〜30%です。成人男性(活動量ふつう)の1日の推定消費エネルギーを2,600kcalとした場合、炭水化物は約325〜422g、脂質は約58〜86gが健全な生命維持の目安値となります。この基準値を逸脱したアンバランスが続いたとき、肥満への扉が開かれます。