ネット上のギタリストコミュニティで長年議論されている大きな誤解が2点存在します。1点目は「丸の内サディスティックは単純な4536進行である」という認識、そして2点目は「どんなアレンジでも原曲キーのE♭で演奏しなければならない」という固定観念です。
音楽理論の観点から厳密に解析すると、一般的な4536進行(IV–V–iii–vi)では2番目のコードがダイアトニックコードのメジャー(V)になります。しかし丸サ進行の神髄は、2番目にセカンダリードミナントである「III7(G7)」を配置する点です。このG7に含まれる導音(シのナチュラル)が、直後のVIm7(Cm7)のルートであるドの音へ強力に吸い寄せられるため、独特のエモーショナルな切なさが生まれます。これを単なる「V(B♭)」で代用してしまうと、楽曲が本来持っているジャジーな陰影が完全に失われてしまいます。
また、丸の内サディスティック キー 転調に関する事実も見逃せません。椎名林檎のライブステージや東京事変のツアー履歴を調査すると、原曲キー(E♭)のまま演奏されるケースだけでなく、半音下げチューニング(実質Key of D)や、ピアノとボーカルの音域を際立たせるための大胆な移調アレンジが複数確認できます。プロの現場ですら、ボーカルの声区やアンサンブルの響きを最優先に移調が行われており、「原曲キーのままバレーコードで指を痛める」ことは決して正義ではありません。
さらに重要なのが、テンションコード 押さえ方の基本原則です。原曲のおしゃれな響きの正体は、A♭M7に付加された9th(シ♭の音)です。ギターで言えば、1弦〜4弦の中音域にこの9thを忍ばせるだけで、ルート音を省いたとしても瞬時に「丸の内の響き」へと変貌します。すべての弦を鳴らそうとする減点方式の演奏姿勢こそが、サウンドを濁らせる最大の落とし穴です。