花巻そばを最も美味しく味わうには、運ばれてきてからのスピード感と所作が決定的な意味を持つ。老舗の職人が推奨する花巻そばの美味しい食べ方は以下のステップである。
- 開蓋の瞬間を味わう:丼に蓋がされた状態で提供されたら、ためらわずにすぐ蓋を取る。閉じ込められていた海苔の磯の香りと鰹出汁の蒸気を胸いっぱいに吸い込む。このファーストアタックこそが花巻そばの最大の醍醐味である。
- 山葵をつゆに溶かさない:小皿の本山葵を最初からつゆにすべて溶きほぐしてしまうと、つゆ全体が濁り、山葵の熱変性によって青臭さだけが残ってしまう。山葵は箸の先で少量すくい、蕎麦や海苔に直接少しだけ乗せて手繰る。
- 海苔と蕎麦を絡めて啜る:つゆの熱で柔らかくなった海苔を箸でちぎり、蕎麦数本を巻き込むようにして一気に啜り上げる。海苔が完全にドロドロに溶け崩れる前の、程よい食感と口溶けが残る段階で食べ切るのが粋である。
自宅で極上の一杯を作るレシピと作り方のコツ
家庭でも、いくつかの急所を押さえるだけで老舗の味を驚くほど忠実に再現できる。
【材料(1人前)】
・蕎麦(生蕎麦または二八の乾麺):1人前(約100g)
・かけつゆ(本枯節の出汁、本返し):350ml
・最高級焼き海苔(有明産の一番摘みが最適):全形1枚半〜2枚
・生本山葵:適量(チューブではなく、必ず生のすりおろしを用意)
【作り方の手順】
1. 海苔の事前準備:食べる直前に、焼き海苔をコンロの遠火で軽く2枚合わせて炙り直す。パリッとした状態にしてから、一口大(3〜4cm四方)に手でちぎっておく。
2. つゆと丼の温め:丼にお湯を入れてあらかじめ熱々に温めておく。かけつゆは沸騰直前まで温める。
3. 茹で上げと湯切り:蕎麦を表示時間よりやや短めに茹で、冷水でぬめりを取って締めた後、熱湯にさっと通して温め直す(湯通し)。水気は極限まで切る。
4. 盛り付け:温めた丼に蕎麦を入れ、熱いつゆを注ぐ。その上からちぎった海苔を、蕎麦が完全に見えなくなるまで隙間なく敷き詰める。
5. 提供:あれば丼に蓋をして食卓へ運ぶ。小皿にたっぷりのすりおろし本山葵を添えて完成。