給与改定のニュースで頻繁に耳にする「ベースアップ(ベア)」と「定期昇給」には、賃金構造上の明確な違いが存在します。この2つを混同していると、自身の給料が上がった理由や企業の賃上げ実態を正確に読み解くことができません。
定期昇給は、「既存の賃金テーブルの中で個人の階段を1段登ること」です。企業全体の賃金水準そのものは変わらず、社員が年齢や評価に応じて設定された枠の中でステップアップします。一方のベースアップは、「賃金テーブルそのものを底上げすること」を指します。年齢や個人の評価にかかわらず、全社員一律で基本給の基準額が引き上げられるため、企業にとっては固定人件費の全体枠が直接拡大することを意味します。
春闘における賃上げ率の発表では、「定昇+ベア」の合算数値が示されます。たとえば賃上げ率が5%と発表された場合、そのうち約1.5〜2.0%程度が定期昇給分で、残りの約3.0〜3.5%がベースアップ分という内訳が典型的です。物価上昇局面においては、定昇だけでは実質賃金の目減りを防ぎきれないため、ベースアップの獲得が労働組合や求職者にとって極めて重要な指標となっています。