「完治しない」という事実を突きつけられると、多くの人は「余命いくばくもない」「すぐに寝たきりになる」という絶望的なステレオタイプに陥りがちです。昭和から平成にかけてのテレビドラマやドキュメンタリーで描かれた悲劇的なイメージが今なお根強く残っているためです。
しかし、近年の疫学調査によって明らかになった実態は大きく異なります。脊髄小脳変性症は単一の病気ではなく、数十種類以上の異なる病態を包含する総称です。孤発性(遺伝歴がないもの)が全体の約65〜70%を占め、遺伝性が約30〜35%を占めますが、どの病型であるかによって進行速度や余命への影響は天と地ほど異なります。
例えば、孤発性の代表格である多系統萎縮症(MSA-C型)は自律神経障害を伴い比較的進行が早い傾向にありますが、遺伝性の代表疾患である「SCA6」や日本人特有の「SCA31」などは、発症が高齢期で進行が極めて緩徐です。発症から20年、30年と経過しても身の回りの自立を保ち、天寿を全うする患者は決して珍しくありません。「不治であること」と「急速に生命が脅かされること」は同義ではないという客観的な医学事実を知る必要があります。