市民が最も懸念する核融合の安全性の真相について、原子力工学の観点から掘り下げます。原発事故において世界を震撼させたチェルノブイリや福島第一原発の事故は、いずれも核分裂特有の性質が引き金となりました。
核分裂炉の内部には、数年分に及ぶ膨大な核燃料が装荷されています。運転を緊急停止しても、核分裂生成物が発する「崩壊熱」はすぐには消えません。冷却機能が喪失した場合、熱を逃がせなくなった燃料集合体が自らの熱で溶融し、圧力容器を突き破るメルトダウンに至ります。
これに対し、核融合炉の内部で起きている現象は本質的に異なります。核融合を持続させるためには、1億度を超える超高温プラズマを強力な磁場で真空容器内に閉じ込め続けなければなりません。真空容器内に存在する燃料の量は、巨大な炉であってもスプーン数杯分(数グラム)に過ぎません。
仮に大地震やテロ、電源喪失などの重大トラブルが発生した場合、磁場制御や加熱装置がダウンした瞬間にプラズマの温度が急低下します。1億度からわずかに下がるだけで核融合反応は自然に成立しなくなり、「火が消える」ように完全停止します。炉心に燃え広がる燃料が存在しないため、暴走も起きなければ、メルトダウンも物理学の法則上絶対に起こり得ません。