宮崎駿監督が「頭」をデザインするにあたり、着想を得たと有力視されているのが、日本の古典的な妖怪伝承である「舞首(まいくび)」です。
江戸時代の奇談集『絵本百物語』などに記されている舞首の伝説は、鎌倉時代、酒の席での喧嘩から互いに斬り合いになり、首を切り落とされた3人の侍(小三太・又重・悪五郎)の怨念が海に落ち、3つの生首となって波間に浮き沈みしながら永遠に争い続けているという怪談です。
『千と千尋の神隠し』の頭も正確に3体1組で行動しており、髭面の男の首が飛び跳ねるビジュアルは舞首の構図と見事に一致します。恐ろしい伝承をそのまま描くのではなく、どこかコミカルで憎めないジブリ流の造形へと昇華させている点に、宮崎アニメならではの卓越した翻案センスが光ります。