ネット上の掲示板やレビュー欄で頻繁に指摘される「遠近両用カラコンは見えにくい」という声は、単なる個人の相性や好みの問題ではなく、コンタクトレンズが採用している高度な光学構造に起因しています。通常の単焦点レンズとは異なり、遠近両用コンタクトレンズは「同時視(どうじし)デザイン」と呼ばれる仕組みを採用しています。これは、遠くを見るための度数と近くを見るための度数(加入度数:ADD)を同心円状に配置し、網膜上に遠近両方の像を同時に結ばせ、脳が必要な像を選択して認識するシステムです。
クリアタイプの遠近両用レンズであればレンズ全面を光学ゾーンとして活用できますが、カラーコンタクトレンズには瞳を大きく見せるための「着色部(プリント層)」が存在します。人間の瞳孔は周囲の明るさによって収縮(縮瞳)および拡大(散瞳)を繰り返しますが、薄暗い室内や夜間の屋外では瞳孔が大きく開きます。この際、レンズ周辺部の着色プリントが光の透過を一部遮蔽し、遠近のグラデーション構造と干渉することで、「全体的に薄暗い」「光がにじむ(ハロー・グレア現象)」「コントラストが低下して焦点が合いにくい」といった違和感を引き起こします。
さらに、多くのカラーレンズでは瞳孔の中央部に手元を見る度数、その外側に遠くを見る度数を配置するセンター近用設計や、スマートフォンの使用に特化した弱度の加入度数を付加するアシスト設計が採用されています。角膜上でレンズがわずかでも偏心(中心からズレる)した場合、度数ゾーンと瞳孔の中心がズレてしまい、著しい視力低下を感じる結果となります。「見えにくい」という噂の背景には、こうした光学物理と眼球解剖学上の明確なメカニズムが存在しています。