借り上げ社宅制度の仕組みは、企業が不動産オーナーや管理会社と直接賃貸借契約を結び、確保した賃貸物件を従業員に対して転貸(又貸し)する福利厚生制度です。従業員個人が部屋を借りる一般的な賃貸契約とは異なり、契約の主体はあくまで「法人(会社)」となります。
この仕組みにおける最大の実務的メリットの一つが、法人契約と敷金礼金の負担関係です。通常の賃貸契約でネックとなる敷金・礼金、仲介手数料、火災保険料、保証委託料といったまとまった初期費用は、原則として契約者である会社側が経費として負担します。従業員側はまとまった貯蓄を取り崩すことなく新生活をスタートできるため、新入社員や転勤者にとって金銭的ハードルを劇的に下げる効果を発揮しています。
かつて昭和から平成初期にかけて主流だった「社有社宅(自社で土地・建物を丸ごと所有する形態)」は、建物の老朽化や修繕維持費の高騰、資産価値下落リスクを背景に急速に姿を消しました。現代のビジネス環境においては、自社資産を持たずに民間マンションを柔軟に活用できる借り上げ社宅が、企業の財務リスクを抑えつつ従業員満足度を高めるデファクトスタンダードとして定着しています。