全国のゆるキャラファンのみならず、一般層にまで底知れぬトラウマと爆笑を刻み込んだ双璧といえば、夕張市のメロン熊と北斗市のずーしーほっきーです。彼らがなぜあれほどまでに奇怪な姿で世に放たれ、全国区のスターへと駆け上がったのか。その裏には、マチの存亡をかけた切実なドラマがありました。
2000年代後半、財政再建団体への転落によって暗雲が立ち込めていた夕張市。観光客が激減し、閉塞感が漂うなかで立ち上がったのが、地元企業「北海道物産センター夕張店」でした。発案者が目をつけたのは、夕張メロンの農家を悩ませる野生のヒグマ被害。「おいしいメロンを食い荒らした熊は、頭がメロンに変貌してしまったのではないか」という突拍子もない着想から、メロン熊誕生秘話が幕を開けます。当初から「媚びない・可愛くしない」を信条とし、血走った眼光と剥き出しの牙を忠実に再現。イベント会場で泣き叫ぶ幼児の頭部を容赦なく噛み砕くパフォーマンスは、テレビ報道やSNSを通じて瞬く間に拡散しました。この「獅子舞のように頭を噛まれると厄払いになる」という後付けの縁起担ぎすら巻き込み、夕張の逞しさを象徴するアイコンとなったのです。
一方、2016年の北海道新幹線開業を控えていた北斗市で起きた騒動も鮮烈でした。新函館北斗駅の誕生に合わせ、市と公立はこだて未来大学がタッグを組んで生まれたのがずーしーほっきーです。市民投票で圧倒的な得票を集めて選ばれたものの、公開されたビジュアルは、北斗特産のホッキ貝とふっくりんこ(米)が合体した不気味な寿司型生物。白目を剥いた無表情、関節を無視した四つん這いの徘徊姿に、ネット上では「狂気を感じる」「夢に出てくる」と悲鳴が上がりました。これがまさにずーしーほっきー怖い理由としてWeb上を席巻した正体です。しかし、この生理的嫌悪感ギリギリを攻めた不気味さは、クリエイター陣による綿密な「違和感の設計」でした。無難なデザインでは新幹線特需の渦に埋没するという危機感を逆手に取り、見事に全国へその名を轟かせたのです。