ネット上の医療情報や掲示板では、前胸部キャッチ症候群に関して科学的根拠を欠く誤解が散見されます。典型的な誤認を是正し、正しい認識を持つことが不安の解消につながります。
最も根深い誤解は、「若いうちに前胸部キャッチ症候群を繰り返すと、将来的に心筋梗塞や心不全になりやすい」という俗説です。断言しますが、前胸部キャッチ症候群と冠動脈疾患・不整脈などの心血管イベントには、因果関係も相関関係も一切存在しません。組織学的な障害や瘢痕を残す疾患ではないため、過去にどれほど激痛を経験したとしても、心臓の将来的なリスク因子にはなり得ないのです。
もう一つの盲点は、「痛みを和らげるために市販の鎮痛薬(ロキソニンやイブなど)を服用すべきか」という疑問です。前胸部キャッチ症候群の発作は、ほぼ全例が3分以内に自然軽快します。内服した消炎鎮痛剤が胃で崩壊・吸収され、血中濃度が上がって効果を発揮するまでには最低でも15〜30分を要するため、薬を飲み込む頃にはすでに痛みは消失しています。突発的な発作に対して経口鎮痛薬を飲む医学的意義は皆無と言えます。