小学生や中学生の頃から都市伝説のように語り継がれてきた「鼻の下のひげ剃ると濃くなる噂の真相」ですが、皮膚科学的な結論から言えば、カミソリで剃ったこと自体によって毛の太さそのものが遺伝子レベルで太くなることはありません。これは完全に「視覚的な錯覚」です。
自然に生えている毛の先端は円錐状に細くなっていますが、カミソリの刃で途中で切断されると、毛の最も太い断面が水平に露出します。剃った直後や伸び始めの毛は、先端が平らな円柱状になるため、光の乱反射や皮膚表面とのコントラストによって「黒く太くなった」ように見えてしまうのです。
ただし、ここには危険な落とし穴が存在します。毛自体は太くならなくても、切れ味の落ちたT字カミソリで何度も皮膚を擦る行為は、表皮の角質層を削り落とし、生体防御反応として「皮膚の角質肥厚」を誘発します。硬くなった皮膚の下で毛が詰まったり、摩擦の慢性化によって毛包周囲の血流が増加し、毛母細胞へ過剰な栄養が届くことで、結果的に毛質が剛毛化するリスクは十分に存在します。
さらに絶対に避けるべきなのが、毛抜きを使った自己処理です。毛抜き自己処理の肌トラブルリスクは極めて高く、無理に毛根から引き抜くことで毛包内部が微細出血を起こし、黄色ブドウ球菌などが侵入して「毛嚢炎(もうのうえん)」を引き起こします。傷ついた毛穴が塞がれて毛が皮膚の中で埋もれる「埋没毛」や、傷跡がシミになるリスクを跳ね上げる行為に他なりません。