ハチやアブに刺された際によく使われる「ポイズンリムーバー(毒吸引器)」ですが、ムカデに噛まれたケースでは基本的に推奨されません。ムカデの顎(毒肢)は皮膚を挟み込むように深く突き刺さり、皮下組織の複雑な層に毒を注入します。そのため、皮膚表面から陰圧をかけても粘度の高い毒素を効率的に吸い出すことは極めて困難です。
無理に吸引器を強く押し当てて陰圧をかけ続けると、かえって毛細血管を破壊して内出血を起こし、組織の炎症を深刻化させてしまいます。さらに絶対に避けるべきなのが「口で毒を吸い出す」行為です。口内のわずかな傷口や歯周ポケットから毒が侵入し、口腔内が大きく腫れ上がったり、喉の粘膜が浮腫を起こして呼吸困難に陥ったりする重大な二次被害を招きます。
余計な刺激を与えて毒を絞り出そうとするのではなく、前述した「43℃〜46℃のお湯と石鹸による洗浄」に専念するほうが、医学的にも遥かに安全で確実な毒の低減につながります。