「一見さんお断り」の文化が最も色濃く残っているのが、京都の五花街(祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東)にある「お茶屋」です。
お茶屋は自前で料理を作る飲食店ではなく、「芸妓や舞妓を呼び、宴席の場を整えるプロデューサー」のような存在です。客の要望に応じて仕出し料理を手配し、芸舞妓を差配し、心地よい時間と空間を演出します。この複雑で高度な仕組みは、客とお茶屋の女将(お母さん)との絶対的な信頼関係によって成り立っています。
花街における紹介制の特徴は、「紹介者に連帯責任が生じる」という極めて厳しいルールにあります。もし紹介された新規客が支払いを怠ったり、座敷で無作法な振る舞いをしたりした場合、その責任はすべて紹介した常連客が負うことになります。場合によっては、紹介者自身の信用が失墜し、出入り禁止になることすらあります。だからこそ、常連客も本当に信頼できる人物しか紹介しません。この強固な相互監視と信頼のネットワークが、数百年におよぶ花街の治安と伝統芸能の格式を守り続けています。