このことわざが誕生した背景には、江戸時代に庶民の間で親しまれた言葉遊び「地口(じぐち)」と、上方いろはかるたの文化が深く関わっています。
最大の特徴は、「甲(こう)」と「功(こう)」の同音韻を踏んだリズミカルな語呂合わせです。江戸から明治にかけて編纂された上方いろはかるたにおいて、「か」の札に採用されたことで日本全国へ広く定着しました(※なお、江戸かるたの「か」は「勝って兜の緒を締めよ」です)。
当時の日本社会において、カメは「鶴は千年、亀は万年」と謳われる長寿吉祥の象徴であると同時に、ウミガメの甲羅から作られる鼈甲(かんざしや眼鏡枠などに使われる高級装飾品)は庶民にとって高嶺の花でした。また、カメの腹甲は「亀板(きばん)」と呼ばれ、滋養強壮の貴重な漢方薬としても重宝されていました。
そうした「誰もが高価で頑丈だと知っている亀の甲羅」を引き合いに出し、「いやいや、それよりも年長者が泥臭く蓄積した生きる知恵(年の功)のほうが遥かに生活の役に立つ」と説いた庶民の実践的リアリズムが、この名句の根底に流れています。