キズパワーパッドをはじめとするハイドロコロイド絆創膏は、擦り傷や切り傷に対して「湿潤療法(モイストヒーリング)」を提供するために開発された医療機器です。傷口から出る浸出液(体液)を保持し、上皮細胞の再生を促す成長因子を閉じ込めることで治癒を早めます。しかし、この密閉環境(オクルーシブ環境)こそが、赤ニキビにとっては最悪の培養器となります。
ニキビの主たる原因菌であるアクネ菌(Cutibacterium acnes)は、皮膚常在菌の一種ですが、生物学的には嫌気性菌(酸素が存在しない環境を好む菌)に分類されます。健康な肌状態であれば毛穴を通して適度に酸素が供給され、皮脂分泌のバランスも保たれているため、アクネ菌が過剰増殖することはありません。
しかし、赤ニキビができている毛穴をキズパワーパッドで密閉すると、外部からの酸素供給が完全に遮断されます。さらに毛穴内部にはアクネ菌の大好物である皮脂が豊富に閉じ込められているため、アクネ菌にとって「無酸素かつ高栄養」という完璧な繁殖条件が整ってしまいます。
その結果、一晩の密閉によってアクネ菌は指数関数的に増殖し、菌が分泌するリパーゼなどの酵素が皮脂を遊離脂肪酸へと分解。これが周囲の組織を刺激して好中球などの免疫細胞を過剰に呼び寄せ、強烈な炎症反応(赤ニキビから化膿した黄ニキビへの悪化)を引き起こします。
また、ネット上では「オロナインH軟膏などの市販薬を厚塗りした上からキズパワーパッドを貼る」という裏技も散見されますが、これは極めて危険な行為です。油脂性の軟膏で毛穴を完全に塞いだ上から密閉することで、薬剤成分の過剰吸収による接触皮膚炎(かぶれ)を併発し、皮膚のバリア機能そのものを破壊するリスクがあります。