東伊豆町熱川温泉の高台に位置し、伊豆諸島を一望できる屈指の眺望で人気を博した熱川ハイツの閉館理由は、複合的な経営環境の悪化と施設維持コストの限界にありました。
同館はかつて、大型バスで乗り付ける団体ツアー客や企業の保養所需要を一手に引き受け、昭和末期から平成初期にかけて高い稼働率を維持していました。しかし、2000年代以降の旅行スタイルの個人化・小グループ化へのシフトに伴い、収益モデルの根幹が揺らぎ始めます。
追い打ちをかけたのが、海沿いの高台特有の塩害による建物の急速な劣化と、広大な館内を維持するための光熱費・温泉管メンテナンス費用の高騰です。自家源泉の維持には莫大なコストがかかり、さらに耐震改修促進法の基準を満たすための大規模改修には億単位の投資が必要でした。客単価の低下と固定費の上昇という二重苦の中、感染症拡大によるインバウンドや国内観光需要の急減が決定打となり、資金繰りが行き詰まった末に事業継続を断念する結果となりました。