物語の舞台は、青々とした自然と穏やかな時間が流れる地方の町。主人公の福太(ふくた)は、誰に対しても優しく、周囲から愛される好青年として育ちました。しかし彼には、幼少期の記憶が一部抜け落ちているという決定的な欠落がありました。福太の心の奥底に沈殿していたのは、かつて近所に住み、誰よりも慕っていた「葵兄ちゃん」の曖昧な面影でした。
平穏な日常はある日突然、激変します。行方不明になっていた葵が、福太の前に姿を現したのです。ところが、青年に成長した福太に対し、葵は「子供の頃の姿のまま、一切成長していない」という異様な状態でした。止まった時間の中で生きてきた葵と、時を刻み続けて大人になった福太。この歪な再会が、封印されていた過去の真実と、二人の間に横たわる因縁の扉を開くことになります。
主要電子書籍プラットフォーム(コミックシーモア、ピッコマ、Renta!など)の試し読みでも確認できる序盤の描写では、穏やかな田舎の日常に差し込む異様な影が巧みに描かれています。無邪気に笑う葵の瞳の奥に見え隠れする底知れぬ狂気と哀愁、そして福太が無自覚に抱く罪悪感が、サスペンスフルな緊張感を生み出しています。