採血業務において最も混乱を生みやすいのが、「直針・ホルダーを用いた真空管採血」と「シリンジ採血後のスピッツ分注」における順序の差異です。
真空管採血のロジック:添加剤汚染の防止
真空管採血では、針が刺さる順番=血液が入る順番です。前述の通り、前の管の添加剤が次の管に混入するのを防ぐため、抗凝固剤の影響が少ない血清スピッツを先、強力なキレート剤であるEDTAスピッツを後回しにします。
シリンジ採血のロジック:シリンジ内凝固との時間勝負
一方、シリンジ採血ではシリンジ内に溜まった血液が空気に触れ、内壁接触によって直ちに応急的な凝固プロセスが進行します。そのため、分注の優先順位は以下のように変わります。
- 最優先分注:凝固スピッツ(クエン酸ナトリウム管)
シリンジ内で微小なフィブリン塊が形成されると、凝固因子が消費されて正確な凝固時間(PT/APTT)が測定不能になります。そのため、血液を取り出したら真っ先に規定量の目盛りまで分注し、即座に転倒混和しなければなりません。 - 第2順位:EDTAスピッツ(血算管)
血小板凝集や微小凝固による血球数(特に血小板数)の偽低値を防ぐため、次に抗凝固剤入りの血算管へ入れます。 - 第3順位:ヘパリン管・血糖管
- 最終分注:血清用生化学スピッツ
血清スピッツは元々「血液を固まらせて分離する」ための凝固促進剤が入っているため、シリンジ内で凝固が始まっていても検査データに悪影響を与えません。したがって最後に分注します。
翼状針(ウィングニードル)使用時の「捨て管」ルール
血管が細く蛇行している患者に対して翼状針を使用する場合、チューブ部分(約20〜30cm)に約0.3〜0.5mLの空気(デッドスペース)が存在します。
もし最初の1本目に凝固スピッツを直結すると、チューブ内の空気がスピッツ内に吸い込まれ、真空圧が落ちて規定量の血液が入りません。クエン酸ナトリウム液と血液の比率は「1:9」と極めてシビアに規定されており、血液量が不足すると抗凝固剤が過剰となって凝固時間が異常延長します。凝固スピッツを1本目に採る場合は、必ずダミースピッツ(または血清管など)を先に接続してチューブ内を満たしてから凝固管を挿入してください。