家具の世界は、構造と用途によって大きく二つに分かれる。ひとつが本稿の主題である「箱物家具」、そしてもうひとつがイスやテーブル、ベッドなどに代表される「脚物家具(きゃくものかぐ)」だ。脚物家具が人間の身体を支え、くつろぎや作業の場を提供するのに対し、箱物家具はモノを支え、空間の秩序を維持する役割を担う。
日本の家具製造業の歴史を紐解くと、かつての伝統的な箪笥(たんす)職人の技が近代化の波を経て洗練された箱物へと進化してきた。ジャパニーズ・モダンの先駆者である剣持勇が戦後、機能美と量産性を追求した家具デザインを打ち立てた時代から、箱物と脚物の調和は日本のインテリアデザインにおける最大の命題であり続けている。脚物家具が空間の「抜け感」や「開放感」を生み出すのに対し、箱物家具は「重厚感」や「背景としての統一感」を決定づける。