『少年時代』の歌詞の独自性をさらに深めているのが、2番に登場する「宵かがり(よいかがり)」という言葉です。こちらも「風あざみ」と同様、辞書には載っていない造語とされています。
一般的に「宵(夕暮れから夜の始まり)」と、夜間の明かりである「篝火(かがりび)」や夏の夜に行われる「鵜飼いの篝火」などの情景を掛け合わせた言葉と解釈されています。夕闇が迫る時間帯に揺らめく光の情景を、わずか5文字で鮮烈に描き出しています。
井上陽水氏の楽曲には、意味を限定しすぎず、聴く人それぞれの記憶の中にある情景を自由に投影できる余白が用意されています。「風あざみ」「宵かがり」「夢はつまり想い出のあとさき」といった連なる言葉たちは、論理的な意味を超えて情緒を直接刺激する、日本語ポップス屈指の美学といえます。