築地で供されるカキフライを前にした初見の客は、ほぼ例外なくその圧倒的なサイズ感に息を呑みます。子どもの握り拳ほどもある巨大なフライについて、巷では「特殊な巨大品種を使っているのではないか」という噂が絶えません。しかし、厨房の現場を取材すると、そこには築地ならではの高度な目利きと職人の卓越した技術が隠されていました。
関係者への取材によると、築地の名店が誇る「超大粒」の秘密は、主に二つのアプローチに分かれます。一つは、三陸(宮城・岩手)や広島、能登などの名産地から、加熱しても縮まない身入りの極めて強い大粒真牡蠣を、豊洲市場の専属仲卸を通じて選定・直送させている点です。そしてもう一つが、築地市場時代から受け継がれてきた伝統技法である「複数粒の抱き合わせ揚げ」です。
熟練の揚げ手は、厳選した2〜3粒の良質な牡蠣を、旨味のエキスを逃さないよう絶妙な力加減でまとめ上げ、一枚の薄い生パン粉の衣で包み込みます。この技法により、外側はサクッと香ばしく、中心部は熱が通り過ぎない絶妙なスチーム状態が保たれ、噛んだ瞬間に内部から凝縮された海のミルクが奔流のように溢れ出します。単に大きいだけでなく、味の密度が極限まで高められていることこそが、築地カキフライ人気の理由にほかなりません。