高松塚古墳の保存問題は、単なる自然災害や不可抗力では片付けられない。文化庁の報告資料や当時の報道各社の取材データを突き合わせると、2002年から2003年にかけて確認されたカビの大量発生は、修理中の水分コントロールの失敗と、閉鎖的な管理体制の限界が複合的に作用した結果だと指摘する専門家は少なくない。
実際、石室の解体作業中には、壁画が接合部のズレやカビ由来の黒ずみによって当初の美しさを大きく損なっている状態が確認された。ネット上では「国宝を壊した」という批判が渦巻いたが、一方で「あのまま放置すれば完全に崩壊していた」という擁護論も根強い。重要なのは、1000年以上も安定していた地下環境を「見学のために開けてしまった」という根本的矛盾である。文化財保護における「公開」と「保存」の二律背反を、これほど象徴的に示した例はない。