日常生活や就職活動の場では、「大卒」と「学士」という言葉が混同されたまま使われているケースが目立ちます。しかし、両者の間には法律上、極めて明確な境界線が引かれています。
「大卒」とは、あくまで特定の大学という学校機関に4年間(または6年間)在籍し、卒業要件を満たして教育課程を修了したという「学歴(教育を受けた履歴)」を指します。これに対して「学士号」は、学校教育法第68条の2第1項および文部科学省の学位規則第2条に基づき、一定水準以上の学術的知見を修めた者に対して公的に授与される「国際的な学位(Academic Degree)」です。
この違いが如実に現れるのが、海外の就労ビザ申請や外資系企業へのエントリーです。海外の入国管理局や審査機関は「どこの大学を出たか(大卒かどうか)」という経歴以上に、「ユネスコなどの国際基準に準拠した学士(Bachelor's Degree)を保持しているか」を厳密にチェックします。極端な例を挙げれば、日本の4年制大学を卒業していなくても、公的機関を通じて所定の単位と学術審査をパスすれば、学歴としては大卒でなくとも法的に正式な「学士号」を名乗ることが可能です。
さらに歴史的な事実として押さえておくべきなのが、「学位」と「称号」の法的な差異です。1991年の学校教育法および学位規則の改正以前、日本において学士は「称号」という位置づけに過ぎませんでした。しかし、国際的な学術的通用性を担保するため、1991年7月の法改正によって学士は修士や博士と同列の正式な「学位」へと格上げされた経緯があります。
これに対し、現在でも専門学校(専修学校専門課程)を卒業した際に付与される「専門士」や「高度専門士」は、文部科学大臣が告示で定めた「称号」にとどまります。短大を卒業した際に得られる「短期大学士」は学位規則上の「学位」ですが、修学年数は原則2〜3年(62単位以上)であり、4年制大学を修了した学士とは明確に区別されています。