長年ファンに親しまれてきたスーパー戦隊VSシリーズの系譜において、ジュウオウジャーとキュウレンジャーのVS映画が制作されなかった背景には、単一のトラブルではなく、制作・編成・ビジネスモデルの3点が複雑に絡み合った必然的な構造的要因が存在します。関係者の証言や当時の制作状況を精査すると、主に以下の3つの決定的な理由が浮き彫りになります。
1. キュウレンジャー「最大12人」体制によるストーリー破綻のリスク
『宇宙戦隊キュウレンジャー』は、シリーズ史上最多となる「初期9人編成」、最終的には「12人の正規戦士」が登場する規格外の作品でした。従来のスーパー戦隊が5〜6人構成であるのに対し、キュウレンジャー単体でも全員に見せ場を作るのは至難の業でした。ここにジュウオウジャーのレギュラー戦士6人(風切大和、セラ、レオ、タスク、アム、門藤操)とバド(ジュウオウバード)を加えると、合計で18人〜19人もの変身ヒーローが1本の映画に密集することになります。
通常の劇場版VS作品の尺(上映時間約60分前後)では、名乗り口上と必殺技の披露だけで上映時間の大半を消費してしまい、両作品のドラマ性やキャラクター同士の丁寧な掛け合いを描き切ることは物理的に不可能という制作上の判断が下されました。
2. 東映のビジネス戦略転換:『Vシネクスト』と配給モデルの刷新
2010年代後半、東映は特撮作品のパッケージ・劇場配給戦略を大きく見直していました。従来型の全国東映系シネコンによる拡大ロードショーから、コアファン向けに期間限定劇場上映とBlu-ray/DVD発売を連動させる『Vシネクスト』レーベルの強化へと舵を切った時期です。単なるファミリー層向けの冬映画から、より購買力の高いファン層へターゲットを絞った柔軟な企画展開が求められていました。
3. 『スペース・スクワッド』構想への合流と企画の優先度
当時、東映が強力に推進していたのが、メタルヒーローシリーズや宇宙刑事とスーパー戦隊の世界観をクロスオーバーさせる『スペース・スクワッド』プロジェクトでした。「宇宙」という壮大な共通テーマを持つキュウレンジャーは、ジュウオウジャーとの地球規模の共演よりも、宇宙刑事ギャバンやシャイダー、巨獣特捜ジャスピオンらと交差する『宇宙戦隊キュウレンジャーVSスペース・スクワッド』(2018年公開)へとリソースを集中させる戦略的判断がなされました。