「高価な一眼レフやミラーレスを買ったのに、スマホの写真とボケ感が大差ない」と感じる原因の多くは、被写界深度をコントロールする基礎パラメータの関係性を把握できていない点にあります。写真においてピントが合っているように見える前後の奥行きの幅を被写界深度と呼び、この幅が狭い状態を被写界深度が浅い、広い状態を被写界深度が深いと表現します。
被写界深度の浅い深いによる違いを自在に操るためには、次の3大要素の相互作用を理解することが不可欠です。
第一の要素はF値(絞り)とボケ感の関係です。レンズ内部の絞り羽根を開いてF値を小さく(開放側に)設定するほど、光の通る開口部が広がり被写界深度は浅くなります。逆にF8やF11のように絞り込むと光束が細くなり、ピントが合って見える範囲は前後に大きく拡大します。
第二の要素は焦点距離です。広角レンズ(24mmなど)よりも望遠レンズ(135mmや200mmなど)を使用するほうが、光学的な圧縮効果とともに被写界深度が極端に浅くなります。同じF値であっても、広角域では背景までピントが合いやすく、望遠域では被写体だけが浮き立つような大きなボケが得られます。
第三の決定打が撮影距離の仕組みです。カメラと被写体の距離(ワーキングディスタンス)が近ければ近いほど被写界深度は浅くなり、被写体と背景の距離が離れているほど背景は滑らかにボケていきます。背景ボケ作りのコツとして「被写体に可能な限り近づき、背景を遠くに配置する」という配置の鉄則が現場で徹底されているのはこのためです。