東京から北海道の洞爺湖畔へ移住し、宿泊施設を備えたパンカフェ「マーニ」を開いた水縞尚(大泉洋)と妻のりえ(原田知世)。尚が香ばしいパンを焼き、りえが季節の食材を使った温かいスープやコーヒーを淹れる店には、心にさまざまな傷や迷いを抱えた客が訪れます。物語は北海道の美しい季節の移ろいとともに4つの章で展開します。
【夏】失恋と新たな一歩|トマトとチーズのカンパーニュ
東京から旅行でやってきた女性・若尾香織(森カンナ)は、彼氏にドタキャンされて失恋のどん底にいました。そんな彼女の前に現れたのは、地元で鉄道会社に勤務する地味で不器用な青年・山時生(平岡祐太)。りえと尚が差し出したのは、みずみずしい夏野菜をふんだんに使った料理と、香ばしく焼き上げたカンパーニュ(田舎パン)でした。見ず知らずの二人が同じパンを分け合って食べることを通じ、香織の凍りついた心が少しずつほぐれ、過去への執着を手放して前を向く姿が鮮やかに描かれます。
【秋】母を亡くした少女と父|思い出のカボチャのポタージュ
母を亡くし、仕事に追われる父・広行(光石研)との間に深い心の距離が生まれていた少女・未香(八木優希)。母が遺した手紙の味を求めてカフェ・マーニを訪れた二人に、りえは特製のカボチャのポタージュを振る舞います。温かいスープの香りに包まれながら、父は娘を愛しながらも不器用さゆえにすれ違っていた心情を吐露し、娘もまた父の孤独を受け入れます。家族が再び手を取り合う契機を「温かな食卓」がもたらします。
【冬】人生の終着地を求める老夫婦|思い出のクロックムッシュ
重い病を患い、人生の終わりに絶望して洞爺湖にやってきた老夫婦、阪本史生(中村嘉葎雄)と妻のあや(八千草薫)。二人は自ら命を絶つ場所を探していました。夫婦の張り詰めた空気を感じ取ったりえと尚は、かつて二人が若い頃に食べた思い出の味であるクロックムッシュと温かいワインを用意します。「生きていることの温もり」を噛みしめたあやは、再び生きる気力を取り戻し、夫とともに春を待つ決意を固めて店を後にします。
【春】訪れた奇跡と新しい命の予感
春の訪れとともに、これまで客たちの心を救ってきた妻・りえ自身の内面にも大きな変化が訪れます。かつて心のどこかに虚無感を抱えていた彼女が、尚の深い愛情に包まれていたことに気づき、物語は感動的なクライマックスへと向かいます。