県庁所在地や政令指定都市といった大都市において、温泉街から離れた市街地でこれほど高密度の源泉を持つ都市は、日本全国を見渡しても鹿児島市をおいて他にありません。鹿児島県公衆浴場業生活衛生同業組合の集計資料や自治体の統計によると、鹿児島市内だけでも源泉数は約270カ所以上を記録しており、市内の大半の銭湯が天然温泉をそのまま引湯しています。
「なぜこれほど源泉が多いのか」という疑問の答えは、鹿児島湾(錦江湾)を形成した姶良カルデラと桜島の地下構造にあります。市街地の至近距離には、超巨大噴火によって形成されたカルデラの熱源が存在し、地下数キロメートルには広大なマグマだまりが広がっています。さらに、シラス台地をはじめとする保水性の高い地層に大量の雨水が浸透し、地下深層でこの強力な火山性地熱によって熱せられることで、市内各所で高熱の温泉水が豊富に生成される仕組みです。
歴史を紐解くと、昭和初期までは海岸沿いの一部で自然湧出していた程度でしたが、昭和20年代後半から昭和30年代にかけてボーリング掘削技術が飛躍的に発展しました。深さ約700メートルから1,000メートル前後を掘削すれば、市街地のどこでも50度から60度を超える高温の温泉が吹き出すことが判明したのです。これにより、一般的な沸かし湯の銭湯を開業するよりも、地下から湧き出る天然温泉を利用したほうが燃料コストを抑えられるという逆転現象が起き、「市内の銭湯=すべて天然温泉」という全国屈指の温泉天国が完成しました。