すき家「チーズ牛丼」の真相|ネットミームの経緯と現在地を追う

すき家「チーズ牛丼」の真相|ネットミームの経緯と現在地を追う

すき家「チーズ牛丼」の真相|ネットミームの経緯と現在地を追うの見逃せないポイントを徹底的にカバーしました。

ネットカルチャーにおいて語られるチーズ牛丼元ネタの歴史は、今から15年以上前にさかのぼります。発端となったのは、2008年にイラストレーターのいびりょ氏が自身の個人サイト上に公開した1枚の自画像風イラストでした。眼鏡をかけ、やや突き出た口元と黒髪の青年が「すいません、三色チーズ牛丼の特盛に温玉付きをお願いします」と注文している様子を描いたその素描は、本来、作者自身が過去の自分を自嘲気味に振り返った極めて私的な習作に過ぎませんでした。

この素朴なスケッチが数奇な運命をたどったのは、投稿から約10年が経過した2018年末から2019年にかけてのことです。匿名掲示板5ちゃんねるの「なんJ(なんでも実況J)」をはじめとするコミュニティで、突如としてこの画像が再発掘されました。スレッド内で「オタク特有の風貌」「典型的な陰キャの顔立ち」を象徴するアイコンとして無断転載が繰り返され、瞬く間にチーズ牛丼発祥の地としてネット掲示板を席巻していったのです。

やがて言葉は極限まで短縮され、チー牛意味として「外見に無頓着で覇気がなく、コミュニケーションに消極的な男性」を指す包括的な蔑称へと変質しました。チーズ牛丼イラスト作者であるいびりょ氏自身は、後に自身のSNS上で「あそこまで悪意を持って拡散されるとは思っていなかった」「自分が描いた絵が誰かを傷つける武器にされたことは心外である」といった趣旨の複雑な心境を明かしています。創作者の手を完全に離れ、記号だけが一人歩きを始めた典型的なネットミームの暴走でした。

中村 さくら
著者

中村 さくら

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。