休止に至る最大のトリガーとなったのは、近年の世界的なエネルギー価格の高騰です。めがひらスキー場の最大の武器は、外気温に関わらず氷を削って雪を造る「ICS(アイスクラッシュシステム)」でした。天然雪が極めて少ない初冬であっても全長1,000メートルを超えるコースを造成できた背景には、24時間体制で稼働し続ける巨大な冷凍機と造雪プラントが存在していました。
業界関係者の試算によると、ICSプラントをフル稼働させるための電気代および重油代は、2010年代半ばと比較して約1.8倍から2.3倍へと跳ね上がりました。降雪期間が短縮化する一方で造雪コストだけが膨張し、リフト券の売上だけでエネルギーコストを回収することが極めて困難な収益構造へと陥ったのです。
リフト券料金の経緯を振り返ると、かつては1日券が4,000円台前半から中盤で設定されていましたが、コスト圧縮と採算確保の狭間で値上げを余儀なくされてきました。しかし、過度な値上げはファミリー層や若年層のスキー離れを加速させるリスクを孕んでおり、価格転嫁にも限界がありました。
さらに、運営母体である株式会社ウッドワン(廿日市市に本社を置く東証スタンダード上場企業)の経営戦略の見直しも大きく影響しています。同社は創業地である吉和エリアの地域振興として、スキー場、温泉、美術館などを長年手掛けてきましたが、本業である住宅建材事業への経営資源集中を進める中で、赤字リスクの高いレジャー施設事業の抜本的な整理・スリム化が断行された形です。