なぜ私たちは、数十年前のわずか数十円のアイスにこれほどまで心を揺さぶられるのでしょうか。心理学および消費行動論の視点から紐解くと、そこには「回想法(Reminiscence)」に近しい感情の賦活作用が働いています。
駄菓子屋という空間は、子どもたちにとって親や学校の庇護から一歩外へ出た最初の「自立的なサードプレイス」でした。限られた小遣いをどう配分するか悩み、当たり棒の一喜一憂を共有した記憶は、単なる味覚を超えて「無邪気だった子ども時代の自己肯定感」と強固に結びついています。「しっとるケ」をもう一度味わいたいという渇望は、味覚そのものへの希求であると同時に、昭和という時代特有の温もりや手触り感を再確認したいという心理的防衛反応でもあるのです。
現代の洗練された高単価スイーツにはない、荒削りながらも底抜けに明るいユーモア。それこそが、情報過多な令和を生きる私たちが「しっとるケ」という名前に惹きつけられ続ける最大の理由と言えます。