夜の帳が下りると、島は完全な闇と静寂に支配される。コンビニエンスストアの白い蛍光灯はない。夜遅くまで営業するバーや居酒屋もごくわずかだ。夕食は民宿で出される島魚のマース煮(塩煮)やモズク、地元の家庭料理を囲み、オリオンビールの缶を開ける。喉を潤しながら、宿の主人や隣の宿泊客と言葉を交わす時間が自然と生まれる。
「いつでもどこでも物が手に入る生活なら、都会で十分でしょう」。宿を切り盛りする女性の言葉が胸に刺さる。自動販売機が売り切れになれば、次の船を待つ。夜になれば眠り、朝の光とともに起きる。不便さを不自由と捉えるか、余白と捉えるか。その価値観の転換を、この島は無言のうちに求めてくる。