東芝の買収をめぐっては、ネット掲示板やSNS上で「東芝は外資に売り渡された」「技術が中国やアメリカに流出した」といった誤った認識が散見されますが、これは明確な誤解です。
前述の通り、買収を主導したのは国内ファンドのJIPであり、株主の大半は日本企業と国内メガバンクです。買収候補には米プライベート・エクイティ大手のベインキャピタルやCVCキャピトル・パートナーズなどの外資勢も手を挙げていましたが、経済安全保障推進法や外為法(対外直接投資規制)の壁、そして原子力や防衛・暗号技術を外国資本に渡すことを警戒した日本政府・経済産業省の意向が強く働き、外資への売却は意図的に回避されました。
しかし、国内連合だからといって安心できるわけではありません。専門家の間ではむしろ「国内連合特有のガバナンスリスク」が懸念材料として指摘されています。
JIP連合には20社もの国内事業会社が参加しているため、「出資各社の思惑が一致しない」「明確な主導権を持つ強力なオーナーが存在せず、船頭多くして山に登る状態に陥るのではないか」という懸念です。さらに、買収時に組まれた約1兆2000億円という借入金(シニアローン)の金利返済負担は重くのしかかります。東芝の営業キャッシュフローから確実に負債を返済しつつ、次世代の脱炭素技術や量子暗号技術へ十分な研究開発費を配分し続けられるかどうかが、再建成否の境界線となっています。