撮影機器の進化と並行して、心霊写真の正体をめぐる科学的根拠の周知もブーム沈静化を決定づけました。その最たるものが、認知心理学における「シミュラクラ現象」と「パレイドリア現象」の理解です。
人間には、逆三角形に配置された3つの点やシミを見ると、無意識に「人間の顔」として認識してしまう脳の認知特性があります。これをシミュラクラ現象による錯覚と呼びます。太古の昔から人類は、外敵や仲間をいち早く発見して生存率を高めるために、わずかな情報からでも顔パターンを過剰に検出する本能を獲得してきました。壁の木目、生い茂る木々の葉の隙間、カーテンの陰影が「恨めしそうな人の顔」に見えてしまうのは、霊魂の仕業ではなく、人類が進化の過程で備えた生存アラート機能の誤作動に過ぎません。
脳科学や視覚心理学の研究が進んだことで、「恐怖の顔写真」とされてきた画像の99%以上が、陰影とランダムなパターンの組み合わせであると説明できるようになりました。かつて霊能者が仰々しく語った「因縁」は、科学的な視覚メカニズムの解説によって急速に脱神秘化されていったのです。