プルメリアが一部で不気味がられる背景には、熱帯アジア諸国における歴史的な風習と、植物学的な性質が複雑に絡み合っています。
1. 東南アジア諸国における「墓地樹(Cemetery Tree)」としての歴史
フィリピン、インドネシア(バリ島)、マレーシア、タイ、ラオスなどの東南アジア地域において、プルメリア(現地名:フランジパニ / カボボ / ドク・ジャンパ)は古くから墓地や寺院の敷地に好んで植樹されてきた歴史があります。
プルメリアは落葉樹であり、定期的に葉を落として裸の枝に花だけを咲かせる姿が「死と再生の輪廻」を象徴すると信じられてきました。また、強い芳香がかつての土葬環境において死臭を和らげる実用的な防臭効果を果たしていたことから、「墓地に咲く死者のための花」というイメージが定着したのです。
2. キョウチクトウ科に共通する「乳白色の樹液と毒性」のリスク
植物分類学上、プルメリアは有毒植物を多く含むキョウチクトウ科(Apocynaceae)に属します。茎や枝、葉を傷つけると分泌される白い乳液状の樹液には、有毒成分である「プルメリシン(Plumericin)」やアルカロイド類が含まれています。
この樹液に直接触れると、肌の弱い人は激しい接触性皮膚炎やかぶれを引き起こします。さらに目に入ると角膜炎を起こす危険があり、誤って口に含んだ場合は嘔吐や下痢、心機能への影響を招くリスクがあります。「美しい見た目とは裏腹に、命に関わる毒を秘めている」という事実が、オカルト的な「裏の怖い意味」としてネット上で一人歩きした側面は否めません。
3. タイの旧名称「ラン・トム」にまつわる不吉な言葉遊び(ダブルミーニング)
タイ王国ではかつて、プルメリアを「ラン・トム(Lantom)」と呼んでいました。この響きが、タイ語で「深い悲しみ」「苦痛・悲嘆」を意味する「ラ・トム(Rathom)」と酷使していたため、「庭に植えると家庭に悲劇が訪れる不吉な木」として民家に植えることが固く禁忌とされていました。
現在ではシリントーン王女によって「美しい街・偉大な光」を意味する「リーラーワディー(Leelawadee)」へと正式名称が改名され、ネガティブな迷信は払拭されつつありますが、過去の土着信仰の記録が日本に断片的に輸入された結果、「怖い伝承」として記憶されるに至りました。