2016年当時、音楽業界の関係者を驚かせたのは、楽曲の売り上げだけではなく、SNSを通じた爆発的なユーザー参加型ムーブメントでした。その中心にあったのが、通称「スキコトダンス」と呼ばれるキャッチーな振付です。
サビの「もし5分前に戻れるなら」というフレーズに合わせて腕時計を覗き込むようなポーズを取り、両手でハートを描きながら小刻みにステップを踏むこのダンスは、誰もがすぐに真似できるシンプルさと可愛らしさを兼ね備えていました。当時急速に中高生の間で浸透していた動画投稿アプリ「MixChannel(ミクチャ)」やTwitter(現X)において、カップルや女子高生たちがこの振付を踊る動画を「#スキコトダンス」のハッシュタグとともに投稿。瞬く間に数万件規模のUGC(ユーザー生成コンテンツ)が投稿される事態となりました。
さらに火をつけたのが、ドラマ主演の桐谷美玲や共演の野村周平らメインキャスト陣が、撮影現場の合間に主題歌に合わせて楽しげに踊る公式メイキング動画の公開でした。キャスト同士の仲睦まじいオフショット感がファン心理を直撃し、ドラマ本編の視聴率を押し上げる相乗効果を生み出したのです。
当時のネット掲示板やSNSの反応を検証すると、一部では「少女マンガ的すぎて気恥ずかしい」「曲が甘すぎる」といった辛口なコメントも散見されました。しかし、それ以上に「一度聴いたら頭から離れない」「恋がしたくなって胸が苦しくなる」といったポジティブな熱狂がネット空間を覆い尽くしました。これは、TikTok全盛期を迎える以前の日本のエンタメシーンにおいて、ショート動画とキャッチーな振付が楽曲ヒットを爆発的にブーストさせるメカニズムを先取りした、極めて先駆的な事例であったと言えます。