みょうが栽培における最大の分岐点は、つぼみの先端から黄色い花弁が顔を出す「開花の前か後か」にあります。収穫適期は、地上に紅紫色の先端が2〜3cmほどツンと突き出た瞬間です。指先で軽くつまんだ際に、弾力があり中身がギュッと詰まっている感触があれば、まさに最高の食べ頃を迎えています。
多くの家庭菜園初心者を悩ませるのが、「開花による風味と食感の低下」です。みょうがのつぼみは幾重もの苞(ほう)が重なり合って構成されていますが、ひとたび開花スイッチが入ると、植物生理学的に「栄養成長」から次世代へ子孫を残す「生殖成長」へとエネルギー配分が劇的に変化します。花を咲かせるために蓄えられていた糖分や水分が急激に消費され、苞の隙間が広がって組織がスポンジのようにスカスカに軟化してしまうのです。
さらに、みょうが特有の爽快な芳香成分である「α-ピネン」や辛み成分の「ミョウガジアール」は、開花と同時に空気中へ揮散し始めます。開花直前のみょうがに比べて、満開を過ぎた個体は香りの立ち上がりが鈍くなり、スジっぽさ(木質化・繊維化)だけが舌に残る結果となります。収穫期には毎日朝夕、株元のマルチングや土の盛り上がりを入念に見回る観察眼が欠かせません。