「押すなよ!絶対に押すなよ!」というフレーズは、現代日本において「押せ」を意味する最も有名なフリ(合図)として定着しています。この様式美を完成させたのが、ダチョウ倶楽部(上島竜兵さん、肥後克広さん、寺門ジモンさん)と盟友・出川哲朗さんでした。
自著や生前の特番インタビューで上島竜兵さんが語ったところによると、このフレーズは綿密に台本で練られたものではなく、生放送の極限状態から生まれた偶発的な産物でした。熱湯の縁に立ち、恐怖のあまり本気で「本当に熱いから押すな」と相方に懇願していた叫びが、スタジオの熱気とタイミングの妙によって「最高の合図」として機能したことが始まりです。
出川哲朗さんもまた、バラエティ番組の対談で「熱湯風呂は信頼関係がないと絶対に成立しない格闘技」と証言しています。落とす側のタイミング、落ちる側の体勢、水しぶきの上げ方、そして湯から上がった後の「殺す気か!」という怒りの咆哮から「お前が落としたんだろ!」のビンタへの流れ。これらすべてが、0.1秒のズレも許されない高度なコンビネーションの上に成り立つ職人技でした。