2018年10月27日午前5時43分、角替和枝さんは東京都世田谷区の自宅で息を引き取りました。享年64。発表された病名は原発不明がんでした。突然の訃報に世間は言葉を失いましたが、その背景には約1年に及ぶ過酷な病魔との闘いと、家族が下した勇気ある決断がありました。
国立がん研究センターなどの専門資料によると、原発不明がんとは十分な検査を行っても最初にがんが発生した臓器(原発巣)が特定できず、リンパ節や骨、肝臓などへの転移巣だけが先に見つかる稀な病態です。全がん患者の約1〜2%程度とされ、原発部位が分からないため標準治療の確立が極めて難しく、進行が早いケースが多いとされています。角替さんに異変が現れたのは2017年秋頃。体調不良を訴えて精密検査を受けた段階で、すでに病状は深刻なステージに達していました。
治療の選択肢が限られるなか、柄本明と家族が選択したのは「無理な延命や過度な侵襲的治療による長期入院」ではなく、「可能な限り自宅で普段通りの日常を送りながら家族で看取る在宅医療」でした。角替さん本人の強い希望でもあったこの選択を支えるため、柄本明は仕事を続けながら懸命に看病に奔走。息子たちも交代で実家に通い、母の好きな映画を流し、家族で食卓を囲む時間を何よりも大切に守り抜きました。
柄本明はのちの特番インタビューで、妻との最期の瞬間について静かに語っています。旅立ちの早朝、静かに呼吸が浅くなっていく妻の右手を柄本明が握りしめ、長男の柄本佑、次男の柄本時生、そして安藤サクラが取り囲むなか、彼女は穏やかに息を引き取りました。公の場でのコメント取材に対し、柄本明は「覚悟はしていましたが、いざその時が来ると、茫然自失という言葉しかありませんでした」と述懐。言葉を絞り出すように語られたその告白は、最愛の伴侶を失った喪失の深さを如実に物語っていました。