神楽坂五十番の歴史は、戦後復興の熱気冷めやらぬ昭和32年(1957年)に幕を開けました。創業当時の神楽坂は、花街としての賑わいを色濃く残し、多くの文豪や政財界の要人が行き交う東京屈指の歓楽街でした。その一角に店を構えた五十番は、本格的な北京料理や点心を手頃な価格で提供する中華料理店として、瞬く間に人気を獲得します。
店の代名詞となったのが、大人の顔ほどもある特大の「肉まん」でした。創業者が「お客様にお腹いっぱい美味しいものを食べてほしい」という一心で考案した肉まんは、上質な国産豚肉とたっぷりのキャベツを使い、手ごねの皮で一つひとつ丁寧に包み込む独自の製法を確立。戦後の食糧難の記憶が残る時代から高度経済成長期にかけて、この圧倒的なボリュームとジューシーな旨みは、多くの人々の心と胃袋を掴みました。
やがて店舗は神楽坂通り沿いに自社ビルを構え、1階で名物の肉まんや点心をテイクアウト販売し、上層階では円卓を囲んで本格中華料理のランチや宴会を楽しむ大型レストラン「中国料理 五十番」へと発展。神楽坂の坂上を象徴するランドマークとして、半世紀以上にわたり親しまれてきたのです。