佐藤蛾次郎(本名・佐藤忠和)さんは、1944年8月9日生まれ、大阪府出身(北海道札幌市育ち)。劇団ひまわりに入団後、子役からキャリアをスタートさせ、若き日からその個性的な容姿と高い演技力で頭角を現しました。山田洋次監督との出会いは1968年の映画『吹けば飛ぶよな男だが』に遡り、その独特の泥臭さと純真さを買われ、1969年公開の『男はつらいよ』第1作へのキャスティングが決まります。
実は、『男はつらいよ』における役名「源公(本名:源吉)」は、最初から柴又帝釈天の寺男として設定されていたわけではありませんでした。第1作では、奈良の宿で旅をしていた寅さんの「舎弟・弟分」のような浮浪児風の若者として登場。その後、柴又へやってきて帝釈天の御前様(笠智衆)に拾われ、鐘つきや掃除を行う寺男として居着くという流れが自然発生的に構築されたのです。
山田洋次監督は後年の回想インタビューにおいて、「蛾次郎は台本に書いてある以上の空気を作ってくれる男だった」と語っています。笠智衆さん演じる御前様の後ろからひょっこり顔を出す間の取り方、寅さんとタコ社長(太宰久雄)の取っ組み合いを野次馬のように煽る仕草など、佐藤蛾次郎さんのアドリブと計算された喜劇の間合いが、シリーズに不可欠なエッセンスとなっていきました。