愛犬が突如として水のような下痢を繰り返し、便にゼリー状の粘液や鮮血が混じる「血便」を目にしたとき、飼い主の受ける衝撃は計り知れません。犬のサルモネラ菌感染症は、サルモネラ属菌(Salmonella entericaなど)が経口的に消化管へ侵入し、主に小腸や大腸の粘膜上皮細胞を破壊・侵入することで引き起こされます。
犬の消化器系は人間よりも胃酸の酸性度が極めて高く(pH1〜2前後)、本来は口から入った多くの細菌を胃の中で不活化する防御機能を備えています。それでも発症に至る背景には、胃酸のバリアを突破するほどの大量の菌を一度に摂取した場合や、ストレス・加齢・基礎疾患によって免疫力が一時的に低下している状態が挙げられます。
臨床の現場で確認されるサルモネラ菌の主な初期症状としては、以下の異変が急激に現れるのが特徴です。
- 急激な発熱と元気消失:体温が40℃前後に達し、呼気が荒く動くのを嫌がる。
- 頻回な嘔吐と食欲廃絶:水さえも受け付けず、胃液や胆汁を吐き出す。
- 激しい水様性下痢と腹痛:腹部を丸める「祈りのポーズ」を取り、悪臭を放つ液状便を排泄する。
- 粘血便の排出:腸粘膜の壊死と出血により、赤黒い便やイチゴジャム状の血便を伴う。
摂取から発症に至るサルモネラ菌の潜伏期間は、通常12時間から72時間程度です。体力が十分にある成犬であれば軽度の軟便程度で自然治癒することもありますが、幼犬やシニア犬では急激な脱水から低血糖症や電解質異常、さらには菌が血流に乗る敗血症へと急速に悪化し、命を落とす危険性があります。愛犬の便に血液が混ざり、明らかなぐったり感が伴う場合は、一刻を争う救急サインと判断すべきです。