本作のキャスティングにおいて特筆すべきは、主要な少年少女キャラクターにキャラクターとほぼ同年齢の子役・若手俳優を配役した点です。
ハク役を射止めた入野自由さんは、当時13歳の中学1年生でした。劇団ひまわりに所属していた入野さんは、厳しいオーディションを勝ち抜いて大役を獲得。スタジオジブリの公式ドキュメンタリーや当時の関係者証言によると、宮崎駿監督は「ハクは川の主であり、神様でもある。千尋に対して毅然としながらも、深い慈しみを持った声を出してほしい」と緻密な指導を行いました。変声期を迎える直前の、少年特有の凛とした涼やかな響きは、入野さんの当時の年齢だからこそ記録できた奇跡的な音色です。
一方、湯婆婆の息子である巨大な赤ん坊「坊」を演じたのが、当時わずか7〜8歳だった神木隆之介さんです。アフレコ現場で無邪気に過ごす神木さんの声質と感性に宮崎監督が強く惹かれ、起用が決まりました。「あそんでくれないと、泣いちゃうぞ」という象徴的なセリフは、作り込んだ演技ではなく、幼少期の神木さんが持っていた天性の愛嬌とリアリティそのもの。この出会いが契機となり、神木さんは後に『ハウルの動く城』(マルクル役)、『借りぐらしのアリエッティ』(翔役)、そして『君の名は。』(立花瀧役)へと続く、日本アニメーション界になくてはならない存在へと飛躍していきました。
主人公・千尋を演じた柊瑠美さんも当時13歳。宮崎監督が求めたのは「どこにでもいる、少し無気力で不器用な現代の少女」でした。柊さんの飾らない発声と、物語が進むにつれて逞しく変化していく声のグラデーションは、まさに作品の成長物語そのものとシンクロしています。