SNSや料理コミュニティでは、毎年春先から初夏にかけて「冷凍したたけのこの水煮を使ったら、ゴムや段ボールを噛んでいるような食感になった」「味が染み込まず、パサパサで家族に不評だった」という悲鳴に似た投稿が散見されます。家庭料理の現場において、たけのこの冷凍は「失敗しやすい保存法」の筆頭格として語られてきました。
日本食品標準成分表のデータによると、たけのこの水煮は全体の約90%が水分で構成されています。残りのわずか10%の中に、あの独特のシャキシャキ感を生み出す不溶性食物繊維(セルロースやヘミセルロース)が網目状に張り巡らされているのです。そのままの状態で凍結させると、細胞内の水分が氷へと変化する際に体積が約9%膨張します。この巨大化した氷の結晶が、強固な食物繊維の壁を内側から無残に突き破ってしまいます。
そして解凍時、壊れた細胞の隙間から水分が一気に「ドリップ」として流れ出ます。その結果、水分が抜け去った繊維の抜け殻だけが残り、まるで水分を絞ったヘチマのようなスカスカの食感が生み出されてしまうのです。これが、多くの人が「たけのこの冷凍はまずい」と口を揃える物理的・科学的なメカニズムです。