禅宗において、座禅を組むことだけが修行ではありません。食事を作ることも、食べることも、後片付けをすることも、すべてが同等の崇高な修行とみなされます。この思想を確立したのが、日本の曹洞宗の開祖・道元禅師です。
道元禅師は食事係の責任者である「典座(てんぞ)」の心構えを説いた『典座教訓』や、食事作法の細部を定めた『赴粥飯法(ふしゅくはんほう)』を著しました。米を研ぐ一粒、野菜の皮を剥く一太刀にも仏性(仏としての本質)が宿ると説き、調理や食事を極めて神聖な行為へと昇華させたのです。
曹洞宗と臨済宗では、読誦する際の節回し(音律)や配膳の手順に細かな相違はあるものの、五観の偈を食事の根本指針として重んじる精神は共通しています。食事の最初から最後まで一切の私語を慎み、器の扱いから箸の上げ下ろしに至るまで無駄のない所作を貫くのが、禅における食事作法の意味です。