SNSや口コミサイトでは「ブラックキャップを置いたのに全く減らない」「バルサンを焚いた直後に平然と歩いていた」といった消費者の困惑の声が溢れています。長年圧倒的な信頼を誇ってきた定番製品に対して、なぜこのような事態が生じているのでしょうか。駆除現場の実態調査から見えてきたのは、単なる薬剤耐性にとどまらない複雑な要因でした。
まず、燻煙剤(バルサン等)についてですが、煙やマイクロミスト状の薬剤は空間全体に拡散するものの、ゴキブリが潜む壁裏や家具のミリ単位の継ぎ目、断熱材の深部までは十分な致死濃度が届きません。さらに前述の通り、現在市販されている燻煙剤の多くはピレスロイド系が主成分であるため、直撃を免れて薄い煙に触れた耐性個体にとっては、死に至るどころか「一時的な刺激」に過ぎず、かえって薬剤の届かない安全な隙間へと逃げ込ませる結果を生んでしまいます。
一方、フィプロニルを主成分とするベイト剤(設置型毒餌)のブラックキャップは、本来ピレスロイド耐性を持つ個体にも極めて高い殺虫効果を発揮します。それにもかかわらず「効かない」と感じる場合、現場では以下の2大要因が確認されています。
最大の要因は、近年学術的にも注目されている「糖分(グルコース)嫌悪変異」です。毒餌を美味しく食べさせるために配合されているブドウ糖などの糖分を「苦い」と感じる味覚変異個体が出現しており、そもそもベイト剤を口にしない現象が起きています。加えて、室内に生ごみや油汚れ、ペットフード、ダンボールの接着剤などの「代わりのエサ」が無数に存在する場合、ゴキブリは警戒心の強いベイト剤に手を出しません。設置場所の選定ミスや誘引源の分散が、毒餌の効果を根底から相殺しているのが真相です。